皆さんは「雪合戦」というスポーツをご存じでしょうか。
「あーあの雪合戦ね!」と思っている方は多いでしょうが、その「雪合戦」のほとんどは私が今回取り上げたい代物とは異なっていると思います。
多分皆さんが想像しているのは、こんな感じの雪合戦だと思います。
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こんな感じの緩い雪合戦なら小学生の頃にやったという人も多いと思いますが、これらの雪合戦は雪玉を相手に当てても永遠に続くし、なんならルールなんてないことがほとんどですから、大方の人はふざけ合いの延長でしかなかったと思います。
しかし
そんな雪合戦に厳密なルールがあったとしたら…
雪玉が弾丸のように飛び交うスポーツだったとしたら…
実は厳密なルールを備えてスポーツ化された雪合戦、通称「スポーツ雪合戦」という競技が日本にあるんです。今回の記事では、私も現在進行形でハマっているガチンコなスポーツ「スポーツ雪合戦」の世界を、プレイヤ―目線で紹介していきたいと思います。
スポーツ雪合戦の発祥は北海道
「スポーツ雪合戦」の成り立ちは今から30年以上も前に遡ります。北海道の札幌から150kmほど南西にいった場所に洞爺湖という湖があります。昔サミットが開かれた場所としても有名です。そんな洞爺湖町のほとりに壮瞥町という町があります。この壮瞥町がスポーツ雪合戦の発祥の地、聖地です。野球でいうところのアメリカです。
日本雪合戦連盟の公式HPにはこのように書いてあります。
夏場は、洞爺湖、昭和新山の自然景観を味わおうと多くの観光客でにぎわいます。しかし、雪の積もる冬場、観光客は減り、町は閑散とします。1987年「冬でも地域を活性化できるような町づくりをしよう」と若者グループが立ち上がり、さまざまなアイディアが検討されました。そこで、考え出されたのが、「スポーツ雪合戦®」による町の活性化だったのです。
スポーツ雪合戦は町おこしの一環として作られたスポーツなのです。
今から30年前となると、町おこしとして流行していたのはいわゆる「ハコモノ行政」でした。テーマパークや科学館などのハコモノを作れば観光客が来るだろうとたくさんの開発が行われていた時代です。
この時代にあって、壮瞥町では、新たなスポーツを作りだすという”圧倒的にソフト面に注力した観光戦略”を打ち出していたのです。
さらにさらに、ここが重要なポイントなのですが、壮瞥町の町おこしグループは冬場に観光客が遠のく原因となっていた降雪に着目します。
私も雪国の出身なので分かるのですが、雪というのは雪国の人にとって非常に思い負担となっています。冬の一日は雪かきに始まって雪かきに終わるといっても過言でないぐらい雪かきをしますし、雪道の運転には非常に気を使います。
そんな現地の人達にとってネガティブなイメージのある雪を観光資源として利用したのです。
ソフト面への着目、雪という天然資源を使うという思考の転換。この町おこしは、地域活性化のモデルケースとなるぐらい研究要素を秘めています。
ちょっと脱線しすぎました(笑)。次からはそんな奥深い背景のあるスポーツ雪合戦の説明に入っていこうと思います。
どのようなスポーツなのか
先ほどの紹介文を見て、いぶかしく思った人もいるでしょう。
「町おこしで作ったレベルのスポーツなんて、どうせ大したことないんでしょ(笑)」と。
そんな人たちにはもう実際に雪合戦が行われている姿を見てもらうしかありません。
百聞は一見に如かず。まずこの動画を見てみてください。
「あれ?なんか思った以上に激しくね?」
「これじゃまだわからない。もっと全体を映した動画が見たいな」
そんなあなたに、続けてこの動画もご覧ください。
この動画だとしっかりと試合として成り立っている様子が見てとれますよね。高速で飛び交う雪玉の数々。フィールド上にある障害物的な何か。躍動する選手たち。
明らかに子供の頃にやった雪合戦とは違う何かが動画上では繰り広げられています。
ではこの競技はどのようなルールで成り立っているのか、続いてはそれを紹介していきたいと思います。
雪合戦のルールとは
雪合戦のルールはドッジボールに近い!
ドッ"チ”? ドッ”ジ”?
ドッチが正解だったか忘れてしまいましたが、雪合戦のルールを簡単に言い表すと
「陣取りとドッジボールを合わせたようなもの」
です。
コートはバスケットコート一面ぐらいで、7対7で戦います。
1セット3分、3セットマッチで行われ、セットの勝利の条件としては、「相手を全員当てる」かもしくは「相手陣地にある旗を抜く」のどちらかです。3分経ってこのどちらも達成されていなければ、コートに残っている人数の多さで勝敗が決まります。2セット先取したチームが試合勝利になります。
ちなみにドッジボール同様に雪玉に当たったら、場外に出なくてはなりません。そして一度アウトになったらそのセットは復活することは出来ません。外野でボール回しなどもありません。
シェルターが存在する
コートの中にはシェルターと呼ばれる壁が7つ存在しています。もう一度コートイメージを見てみてください。
中心部に置かれているセンターシェルターを軸に、点対象に第一シェルター、第二シェルター、シャトーの2つずつ設置されます。
実はこのシェルターをいかにうまく使うかが、勝敗を分ける肝となってきます。
このスポーツの特性上、一度に最大で7方向(7対7で戦うので)から雪玉が飛んでくることになります。自分に飛んでくる雪玉をすべて見切ることはほぼ不可能です。
だからこそこのシェルターに隠れながら、相手を当てることが重要となるのです。
もちろんシェルターは小さい、かつ自陣にはセンターシェルター含めると4つしかないので7人全員は入れません。小回りが利くプレイヤーや体が柔らかいプレイヤーなど、適切な人材を配置することが戦略上重要になってきます。
バックスしか補給することが出来ない
加えて、このシェルター以外にも雪合戦を面白くしている要素があります。それがバックスの存在です。
簡単に解説をしますと、コート上にはバックラインと呼ばれる線が引かれています。
1チーム7人中、背番号1-4のプレイヤーはフォワード、5-7がバックスとなっていて、バックラインを越えて、後ろに下がることが出来るのは5-7のバックスプレイヤーのみです。
そして試合で使う雪玉ですが、1セット1チーム90球使うことが出来ます。この90球は試合前に用意するのですが、試合中はバックラインの後ろにあるシャトーと呼ばれるシェルターに置く決まりとなっています。
さて、このバックラインと雪玉の関係性を考えてみると、もうお気づきになった方も多いとは思いますが、バックラインを越えて雪玉にアクセスすることが出来るのは、5-7番までのバックスプレイヤーだけなのです。
ということは、試合を組み立てていく上で、バックスプレイヤーは極めて重要なポジションとなります。このプレイヤーがいなければ、フォワードは雪玉がない中でただ茫然と立ち尽くすしかありません。
逆に言えば、相手としてはこのバックスプレイヤーを試合初期に全滅させることが出来れば、相手が勝つことはほぼなくなるわけです。
もっと詳しい戦略などを知りたい方はぜひyoutubeなどで「雪合戦」と検索してみてください。
スポーツ雪合戦には国際大会があります
ここまで紹介してきた「スポーツ雪合戦」。実はスポーツ雪合戦には大会があり、日本各地で開催されているんです。
特にスポーツ雪合戦の発祥の地である北海道の壮瞥町では毎年、国際大会が繰り広げられます。それが「昭和新山国際雪合戦大会」です。洞爺湖近くにある昭和新山が試合会場となります。
例年、参加チーム数は約100チーム強、海外からも数カ国参加しています。野球でいうところのWBC、サッカーで言うところのワールドカップ的な位置づけです。
さすがに北海道まではいけないよ、という方でも関東近辺でいえば群馬の北軽井沢や山梨、長野市内でも大会が開催されています。とりわけ長野や山梨はアクセスもしやすいので興味のある方はぜひ参加してみてください。
ただ、やはり大会のレベルとしては、「昭和新山」が段違いです。大の大人たちが本気で雪合戦をしているので見ているだけでも楽しいです。ぜひ昭和新山を目指していただきたいというのがプレイヤーとしての意見です。
ぜひ多くの人に体験してほしい
今、雪合戦は競技人口の減少という問題にあえいでいます。やってみると楽しい競技ではありますが、会場へのアクセスのしにくさや練習会場、体験会場の確保の難しさゆえなかなか新規の競技参入者が多くないのが現状です。
プレイヤーとしては、もっと競技が有名になって、たくさんの人が雪合戦をしてくれた方が大会も競技も、そして日本の地域も盛り上がると思うのでぜひ多くの人にこの楽しさを体験してもらいたいと考えています。
とりあえず初心者の方は
- 1セット3分、3セットマッチ
- 出来るだけ多くの相手に雪玉を当てれば勝ち、もしくは相手陣地の旗を抜く
- 背番号1-4番はバックラインより後ろには下がれない
これだけ覚えていればプレーが出来るので、ぜひ今年の冬にでも近くの大会に参加してみてくださいね。7人集めれば参加出来ますよ。
また機会があれば、雪合戦をするために必要になる道具を、筆者がいつも使っている道具リストから紹介していきたいと思います。